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Anker公式サイトで、モバイルバッテリーの仕様欄を開いてみてください。10000mAhのモデルも、20000mAhのモデルも、27650mAhのモデルも、容量はmAhでしか書かれていません。
一方、JAL公式サイトの重要なお知らせには、こう書かれています。「機内に持ち込み可能なモバイルバッテリーは、1名当たり2個まで(160Wh以下に限る)」。
mAhとWh。買うときに見る数字と、空港で判定される数字が、そもそも違う単位です。**しかも同じページに、もう一行あります。
この記事の結論
上限は「mAh」ではなく「Wh」で決まる。Wh=mAh × セル電圧 ÷ 1000。 現在の壁は160Wh(1人2個まで、預け入れ不可)。 ただしJAL公式は「IATAの規定変更により2027年1月以降は100Whに制限される可能性」と告知している。 **100Whは3.7V換算で27,027mAh。**いま買うなら、この線を越えないものを選べば買い替えずに済む。 20000mAh(72〜74Wh)なら、どちらの壁にも当たらない。
いま160Wh以下なら大丈夫。ただし2027年1月に線が下がるかもしれない
JAL公式の「重要なお知らせ」に書かれている制限は5つです。原文の順に並べます。
- モバイルバッテリーは預かれない。必ず機内持ち込み手荷物として持つこと
- 機内に持ち込めるのは1名当たり2個まで(160Wh以下に限る)
- 航空機内でモバイルバッテリーへの充電をしないこと
- 航空機内でモバイルバッテリーから他の電子機器へ充電をしないこと
- モバイルバッテリーを座席上の収納棚に収納しないこと
ANAも2026年4月24日搭乗分から同じ内容に変更しています。座席の下や前の座席のポケットなど、手の届く範囲で保管する運用です。
問題は2の但し書きです。JALはこう注記しています。
国際航空運送協会(IATA)の規定変更により、2027年1月以降は100Whに制限される可能性があります。
160Whから100Whへ。上限が6割に下がる話です。しかも「可能性があります」という書き方なので、確定ではないが備えておくべき、という位置づけになります。
ここで効いてくるのが、冒頭の単位の食い違いです。**160Whも100Whも、商品ページには書かれていません。**自分で換算するしかない。
mAhをWhに換算する手順
計算は1行です。
Wh = 容量(mAh)× 電圧(V)÷ 1000
Anker Japanの解説記事でも、この式と「一般的なリチウムイオン電池の電圧は3.7V」という前提が示されています。
厄介なのは電圧の値です。リチウムイオンセルの公称電圧は3.6Vと3.7Vの両方が使われていて、どちらを採用するかで答えが変わります。20000mAhで計算してみます。
- 3.6Vで計算:20000 × 3.6 ÷ 1000 = 72.0Wh
- 3.7Vで計算:20000 × 3.7 ÷ 1000 = 74.0Wh
差は2Wh。20000mAhの領域では100Whにも160Whにも遠く届かないので、どちらでも結論は変わりません。差が命取りになるのは、もっと上の容量帯です。
100Whと160Whは、何mAhに当たるのか
逆算します。実務で使うのはこの表です。
| 壁 | 3.6Vで計算した場合 | 3.7Vで計算した場合 |
|---|---|---|
| 100Wh(2027年1月以降の想定ライン) | 27,777mAh | 27,027mAh |
| 160Wh(現在のライン) | 44,444mAh | 43,243mAh |
厳しいほうの3.7Vで見て、27,000mAhを超えたら2027年以降は危ない。この1行を覚えておけば足ります。
「27650mAh」という半端な数字の正体
Anker Prime Power Bankに、27650mAhというモデルがあります(250W、24,990円)。25000でも28000でもない、27650。この数字を式に入れてみてください。
- 3.6Vで計算:27650 × 3.6 ÷ 1000 = 99.54Wh
- 3.7Vで計算:27650 × 3.7 ÷ 1000 = 102.3Wh
3.6V換算で99.54Wh。100Whを、0.46Wh下回ります。
現行の160Wh基準なら、27650mAhでも30000mAhでも40000mAhでも通ります。わざわざ100Wh直下で止める理由が、現時点ではない。**それでも99.54Whに刻んである。**IATAの100Wh化を見越した設計と読むのが自然です(この解釈は当サイトの推測で、Anker公式が設計意図として公表しているものではありません)。
同じシリーズを並べると、意図がはっきりします。
- 25000mAh → 3.6V換算 90.0Wh
- 26250mAh → 3.6V換算 94.5Wh
- 27650mAh → 3.6V換算 99.54Wh
**大容量帯の上限が、100Whの手前でぴたりと止まっています。**メーカーはすでに次の規制を織り込んでいる、と見るべきでしょう。
※単位換算の落とし穴は電熱ウェアでも同じです。→ 電熱ベストの「40000mAh」は計算が合いません
容量帯ごとの換算表
2026年9月8日時点のAnker Japan公式サイト記載の仕様をもとに、Wh換算を当サイトで計算したものです。Wh欄はメーカー公表値ではなく算出値です。
| 製品 | 容量 | 3.6V換算 | 3.7V換算 | 2027年の100Wh基準 | 最大出力 | 重量 | 価格 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Anker PowerCore 10000 PD | 10000mAh | 36.0Wh | 37.0Wh | 余裕 | 28W | 約192g | 5,990円 |
| Anker Power Bank (20000mAh, 22.5W) | 20000mAh | 72.0Wh | 74.0Wh | 余裕 | 22.5W | 約345g | 7,490円 |
| Anker Power Bank (20000mAh, 30W) | 20000mAh | 72.0Wh | 74.0Wh | 余裕 | 30W | ー | 6,990円 |
| Anker Prime Power Bank (20000mAh, 200W) | 20000mAh | 72.0Wh | 74.0Wh | 余裕 | 200W | 約540g | 19,990円 |
| Anker 537 Power Bank | 24000mAh | 86.4Wh | 88.8Wh | 収まる | 65W | ー | 11,490円 |
| Anker Power Bank (25000mAh) | 25000mAh | 90.0Wh | 92.5Wh | 収まる | ー | ー | 17,990円 |
| Anker Prime Power Bank (26250mAh, 300W) | 26250mAh | 94.5Wh | 97.1Wh | ぎりぎり収まる | 300W | ー | 27,990円 |
| Anker Prime Power Bank (27650mAh, 250W) | 27650mAh | 99.54Wh | 102.3Wh | 判定が割れる | 250W | ー | 24,990円 |
型番・容量・出力・重量・価格はAnker Japan公式サイトの表記(2026年9月8日時点)。「ー」は公式の仕様欄で確認できなかった項目。実機は使用していません。
表で目を引くのは、価格を決めているのがmAhではないことです。20000mAhのモデルが6,990円から19,990円まで、3倍近く開いている。差は出力W(22.5W / 30W / 200W)と本体の作りです。容量で値段が決まると思って選ぶと、使わない出力に金を払うことになります。
→ 充電器側の選び方は Qi2 25Wワイヤレス充電器おすすめ5選 にまとめています。
用途別の結論
通勤・日帰り、スマホだけなら:10000mAh
36〜37Wh。約192gで、どちらの規制ラインからも遠い。20000mAhは約345gあり、スマホ本体より重い塊をもう1つ持ち歩くことになります。日帰りで割に合いません。
出張・撮影・複数台を充電するなら:20000mAh
72〜74Wh。100Whにも160Whにも当たらず、2027年に線が下がっても影響を受けません。出力30W前後を選べば、スマホもタブレットも十分に速い。飛行機に乗る人が買うべきはこの帯です。
ノートPCを充電するなら:20000mAh+高出力モデル
容量ではなく出力Wで選びます。65W以上、できれば87W以上。ここは価格が跳ね上がりますが、22.5Wのモデルを買ってからノートPCが充電できないと気づくより安く済みます。
この条件の人は買わなくていい
「飛行機に乗るから大容量を」と考えて、30000mAh以上を検討している人。
逆です。30000mAhは3.6V換算で108Wh、3.7Vなら111Wh。**現行の160Wh基準では通りますが、2027年1月に100Whへ下がった場合、機内に持ち込めなくなります。**モバイルバッテリーは数年使うものです。買い替えサイクルが規制変更をまたぐ。
移動が多い人ほど、20000mAh以下を2個持つほうが確実です。1人2個までは持ち込めるのですから、20000mAh×2個で144〜148Wh分を、どの基準でも合法に運べます。
すでに20000mAhを持っていて「もっと大きいものへ」と迷っている人も、買い替える必要はありません。足りないのは容量ではなく出力Wであることがほとんどです。
停電への備えとして大容量を探しているなら、モバイルバッテリーの延長ではなく別のカテゴリを見るべきです。→ ポータブル電源は5万円と15万円で何が違う?
よくある質問
モバイルバッテリーの値段の差は何で決まるのか
容量(mAh)ではなく、出力Wとセルの品質、充電速度です。同じ20000mAhで、22.5Wのモデルが7,490円、200Wのモデルが19,990円。差額の12,500円は容量ではなく出力に払っています。ノートPCを充電しないなら、この差は回収できません。
予算5,000円ならどれが買えるか
10000mAh・28W前後のクラスが射程です(Anker PowerCore 10000 PDが5,990円)。20000mAhでも6,990円のモデルがあるため、7,000円まで伸ばせるなら容量は倍にできます。ただし重量は192gから345gへ、約1.8倍。
重さはどれくらいか
10000mAhで約192g、20000mAhで約345g、200W対応の大型モデルで約540g。345gは350mL缶とほぼ同じです。毎日カバンに入れる前提なら、この差は効いてきます。
20000mAhでスマホは何回充電できるか
**「20000mAh ÷ スマホの4000mAh = 5回」にはなりません。**内部の3.6〜3.7Vから、USB出力の5V・9Vへ昇圧する過程で損失が出るためです。損失率は製品と使用条件で変わり、メーカーが公表していないケースがほとんどなので、当サイトでは具体的な回数を断定しません。単純な割り算より少なくなることだけは確実です。回数を根拠に選ぶより、Wh換算で上限を確認するほうが実用的です。
自分のバッテリーのWh表記はどこを見れば分かるか
本体の裏面または側面の印字です。商品ページではなく現物に書かれています。「Wh」または「Watt-hour」を探してください。見つからなければ取扱説明書か、PSEマーク周辺の表示を確認します。それでも不明なら、mAhとこの記事の式で計算し、厳しいほう(3.7V)で見ておけば安全側に倒れます。
機内でモバイルバッテリーは使えるのか
**充電に使うことは禁止されています。**JAL公式は「航空機内でのモバイルバッテリーへの充電をしないこと」「航空機内でモバイルバッテリーから他の電子機器へ充電をしないこと」の2つを明記しています。持ち込み自体は160Wh以下・1人2個まで可能ですが、機内では充電に使えません。
座席の上の棚に入れてもいいのか
**入れられません。**JAL公式が「モバイルバッテリーを座席上の収納棚に収納しないこと」と明記しています。座席の下や前の座席のポケットなど、手の届く範囲で保管します。発火時にすぐ気づける場所に置く、という趣旨です。
預け入れ荷物に入れられるか
できません。JAL公式は「お預かりできません。必ず機内持ち込み手荷物として機内へお持ちください」と明記しています。スーツケースに入れたまま預けると、カウンターで取り出しを求められます。
端子の絶縁処理とは具体的に何をするのか
JAL公式が示している方法は3つです。購入時の小売り容器に収納する、テープなどで剥き出しの端子を保護する、別々のプラスチック袋または保護パウチに個々に収納する。2個持ち込む場合は、互いに接触しないよう個別に分けます。
この記事の検証方法と参照日
**検証方法:**メーカー公式サイトの仕様欄の照合、航空会社公式の告知の確認、および単位換算による計算。**実機は使用していません。**製品の使用感・耐久性については記載していません。
数値の区分:
- 公称……型番・容量(mAh)・最大出力(W)・重量・価格は、Anker Japan公式サイトの表記(2026年9月8日時点)。機内持ち込みの制限内容はJAL・ANA公式の告知(同日確認)
- 算出……表中のWh値、および100Wh・160Whに対応するmAhの逆算値は、すべて当サイトによる計算値。メーカー公表値ではありません
- 推測……27650mAhという容量が2027年の100Wh規制を見越して設計されたとする解釈は、当サイトの推測です
**参照日:**2026年9月8日
2027年1月以降の100Wh制限は、JAL公式が「可能性があります」として告知している段階の情報です。確定した規則ではありません。価格・仕様・航空会社の規則は変更されます。搭乗前には必ず利用する航空会社の最新の案内をご確認ください。
**この記事を書いている人:**大学生協でのPC・ネットワーク機器販売から、Mac SE/Quadraの販売とApple認定修理まで、電源とバッテリーまわりのトラブルを店頭で受け続けてきました。「カタログの数字どおりに動かない」という相談の大半は、単位の読み違いが原因でした。この記事もその延長線上にあります。
→ 停電時の備えを含めて考えるなら 2026年 防災セットの選び方 も合わせてどうぞ。
参照した一次情報(記事には掲載しない・確認用)
- JAL 公式「機内持ち込み・お預けの手荷物 重要なお知らせ」(モバイルバッテリー制限5項目、および2027年1月以降の100Wh制限の可能性)
- ANA 公式「モバイルバッテリーの取り扱い変更について(2026年4月24日搭乗分より)」https://www.ana.co.jp/ja/jp/special-notice/001379.html
- Anker Japan 公式 製品ページ Anker PowerCore 10000 PD(A1235)https://www.ankerjapan.com/products/a1235
- Anker Japan 公式 製品ページ Anker Power Bank 20000mAh 22.5W(A1647)https://www.ankerjapan.com/products/a1647
- Anker Japan 公式 製品ページ Anker Prime Power Bank 20000mAh 200W(A1336)https://www.ankerjapan.com/products/a1336
- Anker Japan 公式 超大容量モバイルバッテリー一覧 https://www.ankerjapan.com/collections/highcapacity
- Anker Japan 公式ブログ「【2026年4月から新ルール】モバイルバッテリーを飛行機に持ち込む際のルール」https://www.ankerjapan.com/blogs/magazine/mobilebattery-ontheplane
公開前に埋めたい項目(任意)
- 表中の「ー」(Anker 537、25000mAh、26250mAh、27650mAhの重量・一部出力)は公式仕様欄で確認できなかった項目です。埋まらなければ「ー」のままで問題ありません。
- JAL公式ページ内からリンクされている〔国土交通省〕「モバイルバッテリーの機内持込みの新たなルールについて」を確認すると、行政の一次資料として参照リストに加えられます。記事の信頼性を一段上げたい場合のみ。
