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500Whのポータブル電源で、電気毛布は一晩もつのか

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先に答えを書きます。もちません。

市販の電気毛布でいちばん消費電力が小さいクラス、表記55Wの機種を500Whのポータブル電源につないでも、連続で使えるのは7.7時間。就寝が23時なら、6時40分ごろに電源が落ちる計算になります。真冬の停電で、いちばん冷え込む明け方に切れる。

180Wや120Wの大判モデルなら、3時間台で終わります。

防災グッズとして電気毛布を買う人は増えました。ポータブル電源も同じです。ところが「この2つを組み合わせて何時間もつのか」を先に計算している人は、ほとんどいません。買ってから気づくのでは遅い。

この記事では、電気毛布のW数から使用可能時間を出す計算式と、実際に売れている5機種の数字を並べます。あわせて、多くの防災まとめ記事が推している「USB電気毛布」が停電の夜には向かない理由も書きます。

目次

計算式はひとつだけ覚えれば足ります

ポータブル電源の容量はWh(ワットアワー)、電気毛布の消費電力はW(ワット)で表記されます。使用可能時間はこの2つの割り算で出ます。

ポータブル電源の定格容量(Wh) × 0.85 ÷ 電気毛布の消費電力(W) = 連続使用時間

0.85を掛けるのは、変換ロスがあるためです。ポータブル電源の内部はリチウムイオン電池の直流で、家庭用の電化製品は交流100V。この変換をインバーターが担いますが、その過程で電力の一部が熱として逃げます。カタログの容量をそのまま使える機器はありません。

変換効率は機種によって80〜90%程度に収まるので、間を取って0.85で計算しておくと実態に近い数字になります。安全側に見たいなら0.8で計算してください。

W数別の使用可能時間【500Wh/300Wh/1000Wh】

実際に売れている4機種のW数で計算しました。就寝時に使うことを想定して、8時間もつかどうかを基準にしています。

消費電力300Wh500Wh700Wh1000Wh
55W(小サイズ・敷き)約4.6時間約7.7時間約10.8時間約15.5時間
80W(掛け敷き兼用)約3.2時間約5.3時間約7.4時間約10.6時間
90W(ダブルサイズ)約2.8時間約4.7時間約6.6時間約9.4時間
120W(大判・速暖)約2.1時間約3.5時間約5.0時間約7.1時間

500Whは、ポータブル電源の売れ筋のなかでも中心的な容量帯です。ここが8時間に届いていないところを見てください。最も省電力な55Wでさえ足りません。

逆算すると、8時間を確保するために必要な容量はこうなります。

  • 55W → 約520Wh(実質600Wh級が必要)
  • 80W → 約750Wh
  • 90W → 約850Wh
  • 120W → 約1,130Wh

120Wの大判モデルを一晩使うには、1,000Whを超えるポータブル電源が要ります。この容量帯になると価格は10万円台後半から。ポータブル電源の価格帯ごとの違いはこちらの記事で詳しく比較しています。

ただし、この数字は最悪値です

ここまでの計算には前提があります。電気毛布が8時間ずっと最大出力で動き続けた場合の数字だという点です。

実際の電気毛布はサーモスタットで温度を管理しています。設定温度に達すると通電を止め、下がるとまた入る。この繰り返しなので、平均の消費電力は表記W数を下回ります。温度設定を「中」や「弱」にすればさらに下がります。

ではどれくらい下がるのか。ここが問題で、平均消費電力を公表しているメーカーはほとんどありません。カタログに載っているのは最大値だけです。室温、布団の厚み、設定温度で変わるため、メーカーとしても数字を出しにくいのでしょう。

だから停電時の計算は、最大W数で行ってください。「実際はもっともつはず」という期待を前提に容量を決めると、足りなかったときに取り返しがつきません。停電しているのだから、充電し直すこともできない。

余った容量はスマホの充電に回せます。切り上げて損をすることはありません。

USB電気毛布は「毛布」ではありません

防災まとめ記事の多くが、USB給電タイプの電気毛布をすすめています。5Vなら10W前後、モバイルバッテリーでも動く。理屈は通っているように見えます。

ところが、実物の仕様を読むと話が変わります。

無印良品の「洗えるUSBブランケット」は、サイズが幅110×奥行80cm。十分な大きさに見えますが、ヒーター部分は20×11cmしかありません。ハガキ1枚強の面積です。

アイリスオーヤマのUSB電気ひざ掛けも同じ構造で、ヒーターは2箇所のみ。商品説明には、単体では熱が逃げるため上からブランケットを重ねて使うよう書かれています。

USB給電の上限が構造を決めています。USB Type-Aは5V×2Aで10W。この電力で110×80cmの全面を温めるのは物理的に無理があるため、メーカーは発熱部を絞る設計を選びます。腰やお腹といった、当てれば効く場所に集中させるわけです。

デスクワーク中の足元、キャンプ、車の中。こうした場面では機能します。買って損をする製品ではありません。

ただし、停電した真冬の夜に布団のなかで使うものとしては、役割が違います。全身を温める道具ではなく、局所を温めるカイロに近い。「USB電気毛布があれば停電でも安心」という書き方をしている記事は、この仕様を見ていないと考えていいです。

停電対策として選ぶなら、この組み合わせ

結論を先に出します。表記55Wクラスの小さめの電気毛布と、600Wh以上のポータブル電源。これが現実的な最適解です。

大判の掛け敷き兼用は暖かいのですが、面積が広い分だけ電力を食います。停電時に必要なのは、体が接する範囲だけを朝まで温め続けること。布団や毛布を重ねれば保温は成立するので、電気毛布に全面積を担わせる必要がありません。

1. MunzeYi 電気毛布 140×80cm(55W)

今回の5機種で最も消費電力が小さいモデル。140×80cmはシングル布団の敷き毛布としてちょうど収まるサイズです。

切り忘れ防止タイマーが3・6・8・10時間の4段階。停電時は8時間に合わせておけば、容量の見積もりが立てやすくなります。丸洗いにも対応。

価格帯は3,000円台と、防災用に1枚買い足す前提でも負担が軽い。500Whのポータブル電源と組み合わせて7.7時間、600Whなら9時間を超えます。停電対策としてはこの機種を基準に考えるのがわかりやすいはずです。

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2. BAYATA 電気毛布 160×80cm(80W)

同じ3,000円台で、サイズがひとまわり大きい掛け敷き兼用タイプ。温度調節が7段階と細かく、切タイマーは2・4・8・12時間。

80Wなので500Whでは5.3時間。停電時に一晩もたせるには700Wh以上が必要になります。逆に、ふだん家で使うことがメインで、停電時は数時間しのげればいいという考え方ならこちらが快適です。ダニ退治機能も付いています。

W数と使い勝手のどちらを優先するか。この機種と55Wモデルの選択が、その分かれ目になります。

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3. MunzeYi 電気毛布 160×120cm ダブルサイズ(90W)

2人で使えるダブルサイズ。肩から足元まで1枚で覆えます。AI過熱保護機能と5段階の温度調節を搭載。

消費電力は90W。500Whでは4.7時間しかもちません。ただし2人で使うことを考えると、1人あたり45W相当。人数で割れば効率は悪くない、という見方もできます。

家族で1台を共有する前提なら選ぶ価値があります。ひとり暮らしで防災用に買うなら、55Wモデルのほうが理にかなっています。

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4. Yokimisu 電気毛布 188×130cm(120W)

今回で最大の120W。188×130cmという大判で、掛け敷きのほか肩掛けとしても使えます。温度調節は10段階、タイマーは1〜9時間。

速暖性能を求めるなら選択肢に入ります。帰宅してすぐ温まりたい、寝る前の30分だけ強めに使いたい。そうした用途では120Wが効きます。

ただし停電時は3.5時間。この機種を非常用として考えるなら、1,000Wh以上のポータブル電源とセットで用意する必要があります。平常時用と割り切って買う機種だと考えてください。

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5. 無印良品 洗えるUSBブランケット 110×80cm

USB給電で、モバイルバッテリーでも動きます。温度調節は4段階、洗濯ネットに入れれば洗濯機で洗えます。

前述のとおり、ヒーター部分は20×11cm。全面が温まるわけではありません。デスクでの腰当て、屋外での膝掛けとしては使い勝手がよく、無印良品の店舗で実物を確認できる安心感もあります。

停電時の役割は「補助」です。ポータブル電源が尽きたあと、モバイルバッテリーで局所だけでも温める。そういう二段構えの2枚目として持つなら意味があります。1枚目にはなりません。

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平常時の電気代は、思ったほど差がつきません

ここまで停電を前提に書いてきましたが、電気毛布を使う日の大半は平常時です。W数の違いが電気代にどう出るのか、計算しておきます。

電力量料金の目安単価31円/kWh(全国家庭電気製品公正取引協議会)で、1晩8時間の使用として算出しました。

消費電力1晩あたり1か月(30日)ワンシーズン(120日)
55W約14円約409円約1,600円
80W約20円約595円約2,400円
90W約22円約670円約2,700円
120W約30円約893円約3,600円

55Wと120Wの差は、ひと冬で約2,000円。月にならせば500円ほどです。

この差をどう見るかは人によりますが、少なくとも「電気代が心配だからW数の小さいものを選ぶ」という判断は、あまり意味がありません。120Wの大判モデルでも、ひと冬3,600円。エアコン暖房と比べれば桁が違います。しかもサーモスタットの断続運転を考えれば、実際はこの数字を下回ります。

W数を気にする理由は、電気代ではなく停電時にあります。この記事の主張はここに集約されます。ふだん使いなら好きなサイズを選んでいい。ただし防災用の1枚を選ぶときだけは、W数から使用可能時間を逆算してください。

買う前に確認する3つの数字

商品ページで見るべき項目を絞りました。

  1. 消費電力(W)が明記されているか ── 書かれていない製品は候補から外してください。計算ができません。「省エネ」「節電」という言葉だけでW数の記載がない商品は珍しくありません。
  2. タイマーの最長時間 ── 8時間未満だと、途中で切れます。停電の夜に起きて再設定するのは現実的ではありません。
  3. 手持ちのポータブル電源の定格容量(Wh) ── 出力W数ではなく容量Whを見ます。この2つは別物で、「定格出力500W」と「容量500Wh」を混同すると計算が合いません。

電気毛布とポータブル電源を同時に揃えるなら、先に電気毛布のW数を決めてから電源の容量を決める順番が正解です。逆にすると、容量が足りずに買い直しになります。

防災用品全体の揃え方は防災セットの選び方にまとめています。あわせて読んでみてください。

まとめ

  • 使用可能時間 = 定格容量(Wh) × 0.85 ÷ 消費電力(W)
  • 500Whのポータブル電源では、最も省電力な55Wでも8時間に届かない
  • 停電時の計算は最大W数で行う。実際はもっともつが、期待を前提にすると足りなくなる
  • USB電気毛布はヒーター範囲が数十cm²の局所暖房。停電時の主力にはならない
  • 平常時の電気代差はひと冬2,000円程度。W数を気にする理由は電気代ではなく停電時にある
  • 防災用に選ぶなら、55Wクラス+600Wh以上のポータブル電源

数字が出せる備えは、出しておいたほうがいい。停電してから電卓を叩いても、間に合いません。

※記事内の消費電力・仕様は各商品ページの表記にもとづきます。価格や仕様は変更される場合がありますので、購入前に最新の情報をご確認ください。使用可能時間は変換効率0.85で計算した理論値です。

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